代表挨拶

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近時のディベートの普及とJPDUの担うべき役割 ~普及の熱を絶やさないために~

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近年、ディベート界を取り巻く状況は日々変化しております。特に象徴的な出来事の1つとしては、2022年度から高校の学習指導要領において、英語での発信能力の育成を強化すべく『論理・表現』という科目が設定され、その中で扱う活動例の1つとしてディベートが明記されたことです。中でも特にパーラメンタリーディベート(即興型英語ディベート)は即興での対応力が求められるため、実践的な英語での発信力を身につけるには最適な競技であると考えられます。 パーラメンタリーディベートを通じて身につけることができる力は英語での発信力に留まらず、論理的思考力、自分の意見にとらわれず物事を多面的に捉える力、要点をコンパクトに伝える能力、チームワークなど多岐に上ります。また、上級生になると競技者(ディベーター)としてのみならず、審判(ジャッジ)も務めるようになるため、出てきた議論を客観的な視座から整理し、勝敗の理由を説得的に説明できるよう鍛錬を積んでいくこととなります。さらに、パーラメンタリーディベートはチームで試合を行う団体競技であり、チーム内での連携・協力が重要となります。それ以外にも、同じ大学・団体の仲間内で時には切磋琢磨し、時には協力してサークル・部の運営を行ったり、大学・団体の垣根を越えてディベートを通じて知り合った仲間とともに、試合に限らず、大会の運営など様々な場面で協力したりすることとなります。 「ディベート=論破」というようなイメージが一部では広まっていますが、ディベートとはそれ以上に「思考」「発信」「説得」の営みであり、教育的効果・実践的な英語力を得られるのみならず、コミュニティー内での関係構築を通じて全人的な成長にも繋がる魅力的な競技となっています。 ディベートの認知度が世間で向上する中で、ディベートの魅力を発信し続け、大学におけるパーラメンタリーディベートの普及の熱を絶やさないことが、JPDUとしての使命の1つであると考えています。

日本のパーラメンタリーディベート界の発展と課題 ~全員が楽しめるコミュニティーを目指して~

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本組織は1998年に発足し、今年で25年目を迎えます。その間に日本のパーラメンタリーディベート界は着実に発展し続けてきました。 中でも象徴的なのは、海外大会においても顕著な実績を残すディベーターが増えてきたことです。2021年の世界大会(World Universities Debating Championship)において、日本から参加したチームが初めてオープン部門(英語を第一言語とする話者を含む部門)で決勝トーナメント進出を果たし、2023年の世界大会においても同様の快挙が達成されました。過去にはESL部門(英語を第二言語とする話者を含む部門)での決勝進出やEFL部門(英語を外国語とする話者の部門)での優勝はあったものの、オープン部門での決勝トーナメント進出はなかなか達成されていませんでした。もちろん、これらの実績は紛れもなく一人一人の努力の賜物ですが、ディベート界全体としても、先人たちが積み重ねて下さった成果が実り、着実にレベルアップしてきているように思います。 翻って国内に目を向けると、高校でのパーラメンタリーディベート人口は拡大する一方で、大学でのパーラメンタリーディベート人口は減少傾向にあります。これには、高校での経験者増加によって競技への参入障壁が高いと感じられるようになったこと、コロナ禍を経て中小規模の団体を中心にディベートが続けられなくなってしまったことなど、様々な要因が挙げられます。また、ノウハウや練習環境の点で団体間に格差が生まれつつあることも事実です。しかし、パーラメンタリーディベートは「大会に出て良い成績を残す」ことが全てではありません。前述したように、様々な能力を一人一人が目標を立てて身に付けていったり、ディベートの競技性を楽しんだり、大会の運営などを通じてコミュニティーに貢献する達成感を得たり、ディベートコミュニティーの仲間との交流を楽しんだりなど、実に多様な向き合い方・楽しみ方ができる競技です。 今年度も様々な課題に向き合いつつ、全員がパーラメンタリーディベートを楽しめる環境を形成できるよう、JPDUとして一層各種の取り組みを推進していきたいと考えております。

コロナ禍とディベート ~オンラインを活用した新たなディベート界の未来~

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先程も述べましたように、コロナ禍はパーラメンタリーディベート界に対しても大きな影響をもたらしました。大学での課外活動が制限される中で、パーラメンタリーディベートコミュニティーにおいても団体内・団体間の繋がりが希薄化してしまったことは事実です。 しかし、コロナ禍に伴って進んだオンライン環境の整備は、パーラメンタリーディベート界に新たな可能性をもたらしました。ディベートにはオンラインでもある程度対面と同様に進めることができ、環境に左右されず実施しやすいという特徴があります。そして、オンライン環境の整備によって、地理的制約に囚われずより高いアクセシビリティーを持つ大会・セミナー等を開催することが可能となりました。 2023年度はポストコロナのパーラメンタリーディベートコミュニティーの姿を示す上でも重要な1年となると考えています。JPDUにおいても、様々な団体と連携・協力しながら、オンライン・対面の双方のプラットフォームを活かしたコミュニティーの未来像を構築できるよう、各種施策を実施して参りたいと考えております。

最後に

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私事で恐縮ではございますが、私は中学校の頃から英語ディベートに取り組み始め、およそ7年間、このコミュニティーで過ごして参りました。その中で、多くの先輩方にとても親切にしていただき、技術的な側面においても人間的な側面においても成長することができました。 先人から引き継いだこの大切なコミュニティーを一層発展させ、次の世代に守り継いでいくことが、私の責務だと考えております。JPDU代表として務めを果たすことができるよう、他のJPDU役員と共に努力していく所存です。 日本のパーラメンタリーディベート界に貢献できるよう全力を尽くしますので、1年間どうぞよろしくお願いいたします。

2023年度JPDU代表
渡辺 丈

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